ポレンタ天国

ちょいデブおやじのダイエット奮闘記です(笑)

9月に読んだ本

黒田龍之助『その他の外国語エトセトラ』(筑摩書房[ちくま文庫])
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近年の黒田先生の書き物はいさかさとげとげしくなっているように感じられて、ああやはりフリーランスで矜持を保ったまま生きていくのは難しいのかなあ、などと失礼きわまりないことを考えておりました。これはディーセントな黒田先生が楽しめる本。英語がお嫌いですけど、教えておられただけあって、運用に自信がおありなんですね。「学歴なんて関係ないよと、東大出てから言ってみたい」みたい。


黒田龍之助『もっとにぎやかな外国語の世界』(白水社[白水Uブックス])
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皆さんも外国語を勉強しようぜ、っていう本ですかね。私は未成年のときに伊藤和夫の本を読んで、英文法のおもしろさに気がつきました。それから、その他の外国語にいくつか触れて、世界の切り取り方、と言っては大袈裟ですけど、なんだかそのようなものが言語によって違う、というのがおもしろいな、と素人なりに思います。


イ・ヘヨン『京城学校:消えた少女たち』

『京城学校:消えた少女たち』予告編
本国では興行的に失敗に終わったようですが、なかなかどうして、悪くない映画だと思いました。たんなる百合映画じゃないんですよね。重要人物が「このウンザリする●●を、自分の実力で、自分の足で抜け出したいんです!」と独白するあたりに、それはそれでもう陳腐になった考え方かもしれませんが、しかし批評性を感じられて、それを現代の私たちがここで解釈するときに、向こうの彼らはどう感じるだろうかしら、ということも気になりました。


今野雅方『考える力をつける論文教室』(筑摩書房[ちくまプリマ―新書])
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 考え方の枠組みを得られる本はとてもありがたいものです。本書もそのひとつ。

適切に読まないと、本は害悪を与えかねないからです。特に、切迫した感情にかられ、ただただ答えがほしくてやみくもに読んでいるときには、自分がほしいと思う答えだけを探し、著者の言うことをねじ曲げてまでこれが探していた答えだ、と思いこむようなことにもなりかねません。このような人は――意外に思うかもしれませんが――あんがい見かけられます。(七十三頁)

 私がこれまで読んだ冊数は日本社会で中央値をとったら、それより上になると思いますが、私自身は本を読んで人生が変わったり、本に救われたりしたことがありません。著者の言う第一の読み方、すなわち、なんとなく読んでなんとなくの読後感をためていく、をしているからだと思います。これはこれで、じつはもっとも深いところで何かを感じとっているし、だんだん世の中のことがわかるようになる、と書いてあり、実感としてよくわかります。
 第二の読み方は、迷いながら考え、それを自分のことばで確認していく作業です。私が論文を書くことを苦手にしている理由は、たぶんこれができていないせいです。いつも何となくにしか読まないから、自分の理解を説明できないのでしょう。
 文章の内容を手短にまとめること=要約ができない人はかなり多いと思われます。大学受験時の私もそうでしたし、大学院の先輩にもひとりいました。その方は定例の読書会でいつも、要約をつくることができずに全文を読み上げていました。なぜか。文章の内容を理解できていないからです。「著者のメッセージをつかむため課題文に『なぜ』を発し自分で答え要点をまとめていく」練習をしていないので、文章理解の基礎ができていなかったんでしょうね。
 本筋と関係ないのですが、課題文の以下のくだり、

 彼女は、すぐ友人のサングラスをとり上げてかけてみた。とたんに、
「ヒトの顔が見える!」と彼女は言った。「今まで、ヒト(他人)の顔を見たことがないんです。見てるような顔はしていたけれど、見ることができなかったんです。はじめて顏が見えます。わあ!」と言って彼女は大きく息をした。

共感をおぼえることこのうえなしでした。私も他人の顔が見えないので。

 

8月に読んだ本

張兵『訪日中国人から見た中国と日本:インバウンドのあり方』(日本僑報社)
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もう少し突っ込んだ分析が読みたかったんですが、そもそもこの分野に学術的な分析がろくすっぽなかったことを思えば干天に慈雨の感あり、よしとします。ビザ緩和が最大の要因ということですかね。日本政府ももちろん観光の振興を進めていて、ドイツのロマンチック街道でしたっけ? あれのような
ルート開発の話は、先月読んだ『観光学』にもありました。


林望『増補 書藪巡歴』(筑摩書房ちくま文庫)
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あまり例を見ない書誌学の随筆です。ときおり、フリーランスになってから、しだいに偏屈になっていく書き手がいます。やはり独立自営でやっていくのはたいへんだねえ、と他人事のように思っています。リンボウ先生はこの増補版でむしろおだやかになっておられて、なんだかほっとしました。本書は書物のことだけでなくリンボウ先生の指導者についての回想も多いのですが、どちらの話題であっても、私同様に書誌学がいったい何なのかよくわかっていない人にとっては学問の案内になっていてありがたいです。そういえばフランス文学には、「生成研究」という分野がありますよね。ああいう草稿研究は日本文学でもなされているんでしょうか。


清水亮『教養としてのプログラミング講座』(中央公論新社中公新書ラクレ])
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プログラミングとはどんなもので、また人間の生活といかにかかわっているかについて解説した本です。教養として勉強してもいいけど、考え方にプログラミングの手法を取り入れたいだけなら、プログラミングじゃなくて論理学や法学でもいいし、大学でなにかしらまじめに受講していればそれでじゅうぶんな気もします。プログラミングのとっかかりになりました。


岡田睦『明日なき身』(講談社文芸文庫)
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この著者の存在を知ったのは≪新潮≫でです。生田耕作の没後十年でお弟子さんが寄稿しておられたので、それ目当てで買ったら、下流老人の日常をつづった貧乏くさい話も載っていたのです。三度目の妻に捨てられてからというもの修理もままならないあばら家に暮らし、スーパーで買った安い太巻きを袋詰めするカウンターでほおばって店員に注意される、みたいな挿話ばかりでつよく印象に残っていました。二千十年年以降消息不明、ということは担当編集者も所在がわからなくなったのでしょう。それもそのはず、などと言っては変ですが、収録された諸作品を読む限り、生活保護をもらいながら、いわゆる「貧困ビジネス」にからめとられて居所を転々をしていたようです。これじゃ離婚されてもしょうがないよねえと思わざるを得ない性格・言動が作品にところどころ出て来ます。ですが、著者はそんなことをつゆほども自覚していないのかわきまえていての矜持なのか、なんともとぼけた味わいでそこにひきこまれました。私小説もまた虚実は皮膜の間にありますから、いちいち重ね合わせたり、真に受けたりする必要もありませんけどね。自分が貧困小説を好きなことを再確認しました。


アンガス・ディートン『大脱出:健康、お金、格差の起原』(みすず書房)
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著者の一家がまさに「大脱出」を成し遂げた人なんだそうです。祖父は農業をあきらめて炭鉱夫になり、父は夜間学校に通って土木技師になります。そして著者は名門パブリックスールの特待生になることができ、ケンブリッジ大学に進学します。著者の子供たちはプリンストン大学を卒業後に金融関係の仕事をしているそうです。
 本書は人類がいかにましな暮らしをするようになったかを有史以前からたどります。後半だんだんとつらくなります。米国は千九百七十年代から成長が鈍化しますが、それでも成長は続けているとはいえ、実際にその恩恵にあずかっているのは一握りの富裕層だけで、貧困層は取り残されています。このあたりは金成隆一『ルポ トランプ王国』(岩波新書)と重なります。また、アフリカ諸国にとっては援助がかえって「大脱出」を阻害している、と。支援金は直接国民に渡されるのではなくて政府機関を通すために、大統領宮殿が豪華になっていく。困ったことに、援助の減少と一人当たりGDPの成長の時期が一致しているのだとか。そういう時期から中国による援助が増えていることはハワード・W・フレンチ『中国第二の大陸アフリカ』(白水社)に書いてありました。
 経済成長と命を救うこととに因果関係がないのにびっくりしました。ハイチのように経済が破綻した国でも幼児死亡率は減少しているようです。近年の仮想空間では「経済政策が第一」みたいな風潮が幅を利かせているような印象がありましたが、そして確かに経済成長は重要ではあるけれども、やっぱり死亡率には医療政策が第一という当たり前新書です。
 ネパールはアジアでも最貧国なんですね。これ*1を見るとベトナムやらミャンマーやら日本への留学生が多い国、日本語学校の設立が急増した国が軒並み入っていて、なるほどそういうことかと合点がいきました。


マリオ・ヂ・アンドラーヂ『マクナイーマ:つかみどころのない英雄』(松籟社)
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しっちゃかめっちゃかな話というとブレーズ・サンドラールの『モラヴァジーヌの冒険』(河出書房新社)を思い出しますが、それのさらに上を行くはちゃめちゃぶりでした。ほんとうにつかみどころがない。口癖は「あぁ!めんどくさ!……」で、これは原文では何なんでしょう。
こういうのも出ているけれど、訳者がねえ。
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エドゥアルド・メンドサ『グルブ消息不明』(東宣出版)
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これまたとにかく楽しい本。なんでも作者がはじめてパソコンで執筆した小説なんだそうで、複製と貼付の効果がこれでもかと炸裂していました。ガウディと「コビーの冒険」しか印象にない街だったんですが、どちらも出てこなくて。

(随時更新)新米日本語教師に役立つ本

jn1et.com
中国語教授法に関するブックガイド目次 - 須山哲治のサイト - アットウィキ
これらのウェッブ・サイトでほとんど事足りると思いますが、ここから零れ落ちているものをご紹介します。ご参考まで。

右も左もわからないような新人日本語教師の役に立つ参考書です。



1.即効の期待できるもの
東外大言語モジュール
東外大言語モジュール
日本語を独学する人向けのウェッブ・サイトですが、文法、発音等を教える際の参考にできます。多言語版は英仏露中韓泰土語があります。


漢字のとめ・はね・はらい等をむやみに厳しく指導する人がときおり見受けられますが、楷書に唯一絶対の筆法というものは存在しません。
常用漢字表の字体・字形に関する指針(報告)(平成28年2月29日)」
www.bunka.go.jp

三省堂から書籍としても出版されています。

「学校教育における漢字指導の在り方について」
教育課程部会 国語ワーキンググループ(第5回) 配付資料:文部科学省


彭曦ほか『新日语能力考试N2语法详解:真题分析+模拟测试』(化学工业出版社)
www.amazon.cn
彭曦ほか『新日语能力考试N1语法详解:真题分析+模拟测试』(化学工业出版社)
www.amazon.cn
中国語で書かれた本です。それぞれの文法事項に関連して日本語能力試験の過去問がたくさん収録してあるので、例文や例題を考える手間が省けます。


横溝慎一郎『クラスルーム運営』(日本語教師のためのTIPS77第1巻、くろしお出版)
www.e-hon.ne.jp
教室内の立ち居振る舞いですね。前職で小学校教師をしていた人などは必要ないでしょうが、どうも意外に養成講座などで教えないようなので。このシリーズはどれも気になりますが、まだ読んでいません。


日本語教師のためのパソコン・ショートカット入門(2)
www.n-lab.org
ショートカット・キーを覚えると、ワードやエクセルを使用する際にとても便利です。


情報関連講習会
www.meiji.ac.jp
エクセルのオートフィルや関数などを覚えると作業時間が大幅に短縮できます。電卓の計算結果をエクセルシートに入力しているような人は是非一度ご覧ください。


千島昭宏『合格ナビ!研究計画書の書き方』(東京図書)
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大学院進学を希望する学生は研究計画書を書かなければなりません。*1多くの日本語学校は表紙に魚の絵がある本を備えていると思いますが、学生が使用するならともかく、教える側はあれだけでは心もとないです。本書は量的調査を推しているのがいいですね。


「量的調査?」な人、研究方法について助言できるようになりたい人はこちらもどうぞ。
竹田茂生・藤木清『知的な論文・レポートのためのリサーチ入門』(くろしお出版)
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2.底力を発揮するもの
日本語記述文法研究会『現代日本語文法』(全7巻、くろしお出版)
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文法で不安なことがあれば。


黒田龍之助『はじめての言語学』(講談社現代新書)

はじめての言語学 (講談社現代新書)

はじめての言語学 (講談社現代新書)

この本の参考文献から芋づる式に

定延利之日本語教育能力検定試験に合格するための言語学22』(アルク)
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西田龍雄・編『言語学を学ぶ人のために』(世界思想社)
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と辿っていけます。


規範文法(ただしい日本語とは……みたいなやつ)にとらわれている人は社会言語学の本を読むといいかもしれません。
佐野直子『社会言語学のまなざし』(三元社)
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こちらのほうがやさしそうですが、未読です。
石黒圭『日本語は「空気」が決める:社会言語学入門』(光文社新書)
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ライトバウン、スパダ『言語はどのように学ばれるか:外国語習得・教育に生かす第二言語習得理論』(岩波書店)

言語はどのように学ばれるか――外国語学習・教育に生かす第二言語習得論

言語はどのように学ばれるか――外国語学習・教育に生かす第二言語習得論

 第二言語習得理論に関しては、翻訳した白井恭弘氏が何冊も著していらっしゃいますし、日本語教育に的を絞った本もいくつかありますから、それらをすでに読んだ人は手にとらなくてよいかもしれません。私は権威と権力に弱いので、北米で定番の教科書となっている本書をまず手にとりました。
 日本語教育能力検定試験の対策本でも、この分野に触れています。あらためて書いておくと、ドリル形式の勉強はドリル形式の試験でしか効力を発揮できません。コミュニカティブな言語教育で、意味のある意思疎通を練習しながら最初から使える「手続き的知識」として教えることがたいせつです。もちろん言語の形式に目を向けさせるのも必要ですが、意味のある会話のなかで使うことが学習につながります。白井先生は、大量のインプットと適量のアウトプットを推奨しています。ただし、インプットは翻訳を含みませんし、音読やシャドウイングは厳密にはアウトプットではありません(と言っても、音読やシャドウイングが無意味なわけじゃないようです)。
 「構造的段階づけ」が本文で否定的に扱われています。これは文型積み上げ型の構造シラバスと同義でしょうか。また、文法訳読法も効果が薄いようです。これらが今なお、日本や東アジア、東欧で主流の教え方であるらしく、よくないよねと非難される場面に出くわします。世界的に占有率の高い日本語教科書が文型積み上げ方式である、と後発の教科書も現役の日本語教師も言うのだけれど、それだけ多くの声がありながら、いまだにこの教科書がダントツの人気を誇る。となれば、皆さんこの教科書を使いつつも、コミュニカティブな授業を実践していらっしゃるのでしょうか。
 英語の三人称単数現在形につくsは習得が難しいそうです。それなのに日本国の英語教育では早い段階で導入し、正しい運用を厳しく求める、と翻訳者の方が非難しています。だとすると、ひょっとして日本語の助詞も、習得されるのは遅い段階に属する文法事項でありながら初期の段階から正しい運用を求められすぎる代物なのではないかしらん。


岡本薫『教師のための「クラス・マネジメント」入門:プロのイニシアティブによる改革に向けて』(日本標準)
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 初等中等教育の教員が対象の本ですが、日本語教師が読んでも益するところ大です。
 まず「プロ」=「お金をもらっている人」ではありません。医師が被災地で無償の診察をおこなっても「プロ」であることにかわりありませんから。「プロ」とは「無資格者ではまねのできない『高度な専門的職能』を担う者」のことなのです。一般に高度な職能は高等教育を受けなければ習得できません。近年、日本語学校の採用で「学士」を求められることが増えました。これはおそらく、日本語教師を「プロ」化したい流れがどこかにあるのだろうと思います。
 医師や弁護士は「プロ集団」を形成して、自分たちの権益を守っています。そして、提言・提案をして国民や政府、議会などに働きかけています。日本語学校も団体をつくっています。*2民主主義の制度下で日本語教師が何かを改善したければ、やはり日本語教師自身が「プロ集団」を作って社会の信頼を得る必要があります。*3現状を打破したいときに、他人のせいにして文句を言ってもはじまりません。ルールを変える行動を起こさなくては、誰も聞く耳を持っちゃいません。
 PDCAサイクルを回そう!などと言っても、そもそもP(Plan、計画)の段階でつまずいている事例が多々あります。現状把握と原因究明をじゅうぶんにしないまま即座に対策を考えていることが多いのですが、さらに深刻なのは、目標設定の失敗です。「自立」とか「明るく元気な学生を育てる」とかはたんなるスローガンであって、目標ではありません。達成目標は、定量的にせよ定性的にせよ、結果と比較して測定できるようにしてはじめて、検証が可能になります。そして、教育は、ひとりひとりの学生をある状態にするためのものですから、達成目標は「クラスの半分以上がN2に合格する」みたいなものであってはならず、すべての学生に共通する「最低達成目標」が先に設定されなければなりません。
 あとは、著者の愛読者ならおなじみの、「ルール」と「モラル」を混同するな、ですね。白鵬が変化すると「横綱としていかがなものか」みたいな非難の声が沸き上がりますが、だめならルールで禁止すればよいだけのことです。日本国では内心は常に自由です。そして、行動はルールに反しない限り自由です。これがわかっていないせいで、いじめ問題に対して、ルール違反を罰するかわりに「心の教育」で何とかしようとしてうまくいっていないのは皆様ご存知の通りです。
 それと、「プロ」の仕事は求めらている結果を出せるかどうかが重要なので、結果に結びつかない「心」や「愛情」は不要です。学校教員ひいては公務員の給与を安くしろと主張する人たちがいますよね。そうすれば、「志」の高い人だけが残るから。実際にそんなことになれば、能力の高い人がこういう職を選ばなくなるのがおちです。日本語教師も低賃銀の仕事ですが……。


高等教育機関を出てそのまま教師になった人や会社員経験のない人はこういった本を何かしら読んでみてもいいかもしれません。
老婆心ながらひとつ注意しておきたいのは、この手の本は往々にしてオッカム先生おっしゃるところの「山賊の世界」*4への適応を迫る点です。

日本生産性本部・編『新入社員読本:仕事の基本100のポイント』(第3版、生産性出版)
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日本語教育サクサク
Nihongo kyooiku SAKUSAKU | Web Japanese Books
 twitterが推奨されていますけど、ツイッタランドで人気のある日本語教師はおしなべて

1)SNSを痰壺だとみなしていて、毎日せっせと痰を吐く
2)日本語教育について思いつきと思いこみを語る
3)マス・コミ文化人やアルファブロガー/ツイッタラーから*5仕入れた浅薄な知識で政治、社会、経済のことをわかったつもりになっている
4)「エア軍師」として提言ばかりする

人のどれかなので、フォローすると苛苛がつのります。*6たいへん残念なことですが、影響力の大きな人たちが確たる証拠もなく、非論理的な意見をだらだらと書き散らす業界なんです。*7
 それと、中高年男性日本語教師が三十歳前後の女性日本語教師の囀りにせっせと応答する光景も傍から見ていて……。おっさんは若い女の人とふれあいたくてしかたないのだけれど、話しかける手段が説教か助言しかない、というのはこの業界に限った話ではありません。
 あと、仮想空間で情報に接する際は、その情報を発信する人が誰で媒体が何かをつよく意識しましょう。信頼できない執筆者、媒体の情報を真に受けてああだこうだ埒もないことを語る人が非常に多いです。


著作権なるほど質問箱
著作権なるほど質問箱
例外もありますが、市販の教材をたとえ一部分であってもコピーして学生に配布することは著作権を侵害しています。また「私的使用のための複製」が認められているとはいえ、日本語教師の使用目的が授業で使用する等の場合は「私的使用」にあたらないんじゃないかと思います。


社会保障教育
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国内の非常勤職員ないしアジア諸国の教師で所得が低い人も、国民健康保険国民年金を、可能なら国民年金基金も払いつづけたほうが安心できます。じゅうぶんな資産がある方はこのかぎりではありません。

*1:pluit-lapidibus.hatenablog.com

*2:pluit-lapidibus.hatenablog.com

*3:pluit-lapidibus.hatenablog.com

*4:

*5:あるいは書店に並ぶ「ビジネス書」、つまり専門書でない本から。はたまた極論や「逆張り」、デマ、「炎上商法」で注目される人から

*6:pluit-lapidibus.hatenablog.com

*7:まあ、私の老親もそうです。それが「ふつうの人」のありようではあります。

7月に読んだ本

洪金寶『おじいちゃんはデブゴン』

映画『おじいちゃんはデブゴン』予告
 香港映画も「ドラマ」を作れるようになったのだなあと感慨を覚えました。サモ・ハンお得意のギミックももちろんでてきます。見てよかった。


陳木勝『コール・オブ・ヒーローズ:武勇伝』

『コール・オブ・ヒーローズ/武勇伝』映画オリジナル予告編
 敵役がいい。何も論理的一貫性がなく、ただ悪を楽しむ造形になっています。彭于晏をはじめてハンサムだと思いました。ひげを生やしたほうが男前です。深読みしてもしなくてもスカっと快適な映画でした。


福嶋伸洋『リオデジャネイロに降る雪:祭りと郷愁をめぐる断章』(岩波書店
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 たぶんオリンピックに合わせた本。著者が留学したのは十余年前だそうですが、その思い出が鮮やかに綴られて、眼前に浮かぶようだ、と書いてしまっては月並みにすぎますね。軍事政権の苦い記憶がボサノバにもつきまとっているあたりも興味深いのですが、著者の帰国後の話もよいです。日本にリオを見つけることができる才能がうらやましい。


「らくごDE全国ツアーvol.5:春風亭一之輔のドッサリまわるぜ2017」

朝 七「初天神
   「代書屋」
   「夢見の八兵衛」
  中入り
   「明烏

 前座さんはちょっと聞き苦しかったです。「代書」と「夢八」は当代なら雀々さんのが好きです。一之輔さんも一之輔さんらしいアレンジでうまく消化してらっしゃいました。「明烏」は速記で読んだことはあれど音で聞くのははじめてでした。この噺、やはり好きになれません。他の廓噺は好きなんですが。うぶな人に興味がないんでしょうね。


高口康太『中国経営者列伝』(星海社新書)
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 中国企業のいくつかは日本でもすっかり知られるようになりました。その人たちの立志伝です。この新書はふだんあまり本を読まない若者向けなんでしょう。受像器から流れるお笑い番組で、笑いどころをわざわざ字幕で強調するものがありますが、あれに似た編集がされています。私が対象読者じゃないだけなんですけどね。著者がはじめに予告している通り、経済成長のおもしろさを伝える本です。楽しみながら読めました。目的がそれですから、光あるところに影もある、「マットレス文化」で死者が出たなんて無粋な話はでてきません。読むだけならけっこうですが、こういう人たちの会社で働くのは、「それこそ僕には無理だなあ」((c)村上龍)


溝尾良隆『観光学:基本と実践』(改訂新版、古今書院)
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 日本と世界の観光地を具体的に紹介しながら理論を学べる本です。日本国はいよいよ産業が立ち行かなくなってきたので「観光立国」を大きく打ち出すようになりました。ところが、日本国民は長期休暇をとりませんから、日本の観光地は一泊二日の旅行に最適化してしまいました。個々の施設がてんでばらばらに展開し、自動車の利便性を優先したために、観光資源を維持・発展させることができず、諸外国にあるようなリゾート地を作ることに失敗しています。たしかに二、三週間長期滞在したくなるような観光地はちょっと思い当たりませんよね。英国のスコットランド湖水地方へバスで行って、で何もせずに過ごす例が挙げられていますが、それみたいな休暇旅行の土地が、あまり。京都なんかは碁盤の目の中を自動車乗り入れ禁止地区にしてもよかったんじゃないかと、若いころは思っていました。千九百七十年くらいの写真を見ると、まだ景観の統一性を保てていたのに、それが今どうなっているかは皆様もご存じのとおりです。


久保田進彦ほか『はじめてのマーケティング』(有斐閣)
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 ダイソンやサンリオといった有名企業の事例がたくさん紹介してあって、「ああなるほどそういうことか」と納得しながら読めました。初めの一冊としてよくできていますが、これだけで研究計画を立てるのは厳しいでしょうね。続きの一冊が必要です。商品を売るために、あの手この手いろいろあることを教えるための本ですから、この本に文句をつける筋合いのものではまったくないけど、たとえば、事例が上げれらている企業のなかには、労働環境が劣悪なことで有名なところもあってですね、そうした方面を扱わない研究分野だから仕方ないとはいえ、やはり「山賊の論理」((c)オッカム先生@oxomckoe)だよなあ、と思わないでもないです。莫大な収益を上げた要因は、もしかしたら販売戦略だけじゃなくて、コストカッターがいることも大きいかもしれないわけで。
 コストカッターで思い出しましたが、震災後に店間移動を廃止した書店がありました。それじゃあナショナル・チェーンである意義がないじゃん、と当時は懐疑的でしたが、あれも、買収されて以降のことだから、本社からコストカッターを送り込まれていたのかもしれません。契約社員は残業するなという通達が出されたのもあの頃でしたし。

6月に読んだ本

asa10.eiga.com
受像器ではなんども見ました。劇場で見るのははじめてでした。大画面だから気がつくこともありますね。駅で待ち伏せているところに怪しい男が入ってくる。その男は柱を背に新聞を読みはじめるのですが、男が現れたとき、床を拭いていた掃除夫がじろじろ男を見ていました。


小嶋英夫ほか編『成長する英語学習者:学習者要因と自律学習』(英語教育学大系6、大修館書店)
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 第4章「学習ストラテジーとメタ認知」、第6章「学習者と指導者の自律成長」だけつまみ読みしました。メタ認知的活動(計画する、注意を集中する、自己観察する、自己評価する)を行うことが語学習得には重要だから、教室授業で明示的に指導することが望ましい。「学び中心」の授業では教師も生徒も自らの学習に責任を持ち、生涯学習者であることが期待されている。

 たしかに先進国でありつづけるためには生涯学習がとても大切だと思いますが、まあ今のところ失敗していますよね。勉強はたぶん自然に反した行為なので仕方ないです。本書で何度か「生きる力」が触れらています。文部科学省によると、このようなふんわりした概念のようです。
確かな学力


國司航佑『詩の哲学:ベネデット・クローチェとイタリア頽廃主義』(プリミエ・コレクション68、京都大学学術出版会)«イタリア学会誌»第66号に土肥秀行先生の書評が掲載されていますから、そちらをご高覧ください。いずれ以下に公開されることと思います。
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/studiitalici/-char/ja/www.jstage.jst.go.jp


佐野直子『社会言語学のまなざし』(三元社)
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 一般に教科書と聞いて思い浮かべるものとちょっと違っていて、独特な概説書に仕上がっています。この手の本にはさらに知見を深めるための読書案内がついているものですが、それもプリモ・レーヴィの『休戦』だったりして。日本語教育能力検定試験の受験勉強をしたときに言語学の初歩の初歩を勉強したことで、それほど支障なく理解できたように思います。
 社会言語学は、従来の言語学がそれぞれの言語を総体として扱ってきたために見えなかった部分に注目する研究分野である、という理解でいいのでしょうか。私は日本語を話すとき、場面によって話し方が異なりますし、配慮や戦略を変えています。また、日本社会にも日本語が母語じゃない人がたくさんいて、手話をつかう人もそれに含まれます。多くの人は単一言語空間だと思い込んでいるだけなんですよね。

5月に読んだ本

細川英雄ほか編『複言語・複文化主義とは何か:ヨーロッパの理念・状況から日本における受容・文脈化へ』(くろしお出版)
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 日本の外国語教育でよく見る主張に対する違和感の正体はこれでした。
Can-DoっていうときCEFRっていうのやめたらみんな幸せにならないかなtam07pb915.wordpress.com
ヨーロッパ言語共通参照枠に触れなきゃいいのに、can-doリストやタスク先行シラバスを持ち出すときに決まっていっしょにするものだから、理念無視かよ、と思って苛苛が募っていました。第6章で細川が問題提起していますが、私も同意します。
 コミュニカティブ・アプローチが導入された際に、そもそもコミュニケーションとは何かについて議論されないまま、具体的な方法ばかり取りざたされ、文型練習からロールプレイによる定着へと進んだと、細川は指摘します。CEFRの根本理念は四つあります。

ヨーロッパにおける個人一人ひとりのなかにある複言語・複文化性を認めること、そのことを基本にした個人間の相互理解が重要であること、そのための市民性の確立が必要であること、そして、そうした市民によるヨーロッパ社会形成をめざす(154・155頁)

ことです。その先には戦争のない平和な社会の実現があると言っては穿ちすぎでしょうか。とまれ、日本社会では、何のための言語教育かが含意されずに、日々、方法の模索ばかりが行われています。


ハワード・W・フレンチ『中国第二の大陸アフリカ:一〇〇万の移民が築く新たな帝国』(白水社)
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 著者は最後まで慎重な姿勢を崩しません。それでも超絶おもしろい。文化大革命時に青春時代を過ごした「失われた世代」が人生の再起をかけて移住し、近ごろの若いもんは根性がないなんて言っているけど、当の若者たちも本国の苛烈な競争社会に耐えかねて移住し、一旗揚げようと目論んでいる。アフリカ人が成功するための第一歩は路上の小商いだけど、この分野にまで中国人が進出しているものだから、わずかにあった地場産業がどうなっているかは言うまでもありません。
 著者も指摘する通り、余剰人口を外へ吐き出してその地で食糧増産を図る手法は、かつての満洲国を髣髴とさせます。そして中国ばかりでなくインドも乗りだしているらしきことが本書でチラと触れられています。
 かつてはレバノン人やフランスの草刈り場だったところへこうやって新興国がやってきた。どんな事業でもすべて自分たちが仕切って現地人には最底辺の仕事しか回さないと言って、不満がたまっているようです。中国人の言い分としては、現地人はマネジメントができないから、です。教育の問題は深刻ですね。現地の政府首脳部が私益しか考えていないことも大きな要因です。天然資源を外国に売り飛ばした結果として立派な大統領宮殿ができるばかりで、売却益を人材育成に回しません。
 アフリカの夢ももはやかなり小さくなって、後発組は露天商で終わってしまうようですが、さてどうなることやら。  


池田秀三『自然宗教の力:儒教を中心に』(叢書現代の宗教16、岩波書店)
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 専門家の発言だからといって鵜呑みにしてはいけないことぐらいもちろんわかっているのですが、それでもなかなかどうして、判断を誤ることが多々あります。KJ御大の『儒教とは何か』にひどく感銘を受けた過去の自分をぶん殴ってやりたい。
 著者は宗教の要件を(1)超越的存在者に対する信仰、(2)教団組織の存在すること、の二点とし、「儒学を宗教とは認定しないけれども、儒教に宗教性はある」(179頁)との立場をとります。宗教とまでは言えない、というわけです。
 儒教宗教説、非宗教説のそれぞれを検討したうえでの結論です。「いかなるわけか加地氏は先行業績として山下(引用者註:龍二)氏の名を挙げていない」(100頁)時点でいろいろと察してしまいます。

私はなお定説に与したく思う。その理由は、定説の読み方のほうが素直、換言すれば、山下氏の読みは不自然な感じがどうしてもするからである。それはまったく感覚的なものでしかないが、私は古典の読みにおいては感覚は極めて重要だと考える(文法的には成り立ち得ても、あるいは理屈はいちおうと通ったとしても、不自然だと感じさせられる読みはまず正しくはない、というのが私の基本的立場である)。(112頁)

という件りを読んで、親方の口癖、「真実はいつも単純で、素直で、強い」を思い出しました。


靜哲人『英語授業の大技・小技』(研究社)
www.e-hon.ne.jp
 ここまで手の内をさらしてくれるのか、と驚きました。著者が英語教師として実践したテクニック(今風に言えばTIPS)の数々が紹介されます。
 1.遅刻させないためには 2.分かりませんと言われたら 3.居眠り禁止の3段階方式 47.さくさくやるぞ小テスト 52.これがベストだテスト返却 53.再試あの手この手 などは言われてみればそうだよね、ですぐ使いたくなります。
 それと、発音の重要性に気づかせてもらいました。これまたよく言われることではありますが、発音できない音は聞き取れないわけでして、シャドーイング大事。最近はやりの協働学習ないしピア・ラーニングも、靜先生は二十世紀末から実践してらしたんですよ。

イタリア語の読解教材その2(シリーズ中華教材③)

pluit-lapidibus.hatenablog.com
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北京语言大学出版社から、イタリア語の読解教材が出版されていました。
Marco Dominici,Cinzia Medaglia『意大利语分级阅读』

《意大利语分级阅读》系列是从意大利原版引进的分级阅读图书。全套分4册,依照欧洲语言参照框架分级结辑,内容均为当代原创短篇小说,故事情节生动感人。每个故事都配有生动的精美插图,以及声情并茂的专业朗读音频。故事配有读前思考和读后活动,用以检验阅读效果。各篇故事提供注释及译文,以扫清阅读障碍,辅助学习、欣赏阅读内容。可与《新视线意大利语》系列教材配套使用。*1

大意をとると、「『レベル別イタリア語読解』シリーズはイタリアの原書から引用したレベル別読解図書です。全4冊で、ヨーロッパ共通言語参照枠に準拠してレベル別に編集しました。内容はどれも現代の短篇小説で、物語の筋書きに感動することでしょう。すべての話に生き生きとした美しいイラストを配し、声がよく情感たっぷりなプロの声優による朗読音源も附いています。各話とも読む前と読んだ後の活動を用意して、精読効果を高めます。註釈と訳文もありますから、すらすら読め、学習の助けにもなり、内容も鑑賞できます。『Nuovo Progetto Italiano』シリーズ*2の副読本にも。」

第1輯はA1-A2、第2輯はA2-B1、第3輯はB1-B2、第4輯はC1-C2に合わせているようです。未読ですが、そのうち取り寄せたく思っております。

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