2月に読んだ本
映画ですが、アントワーン・フークア監督『マグニフィセント・セブン』
映画『マグニフィセント・セブン』予告編
松永澄夫・編『知識・経験・啓蒙【18世紀】』(哲学の歴史6、中央公論新社)
哲学の歴史〈第6巻〉知識・経験・啓蒙―18世紀 人間の科学に向かって
- 作者: 松永澄夫
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2007/06
- メディア: 単行本
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厳密な意味における宗教的寛容は、たんに信教の自由ないし良心の自由を認めることではなく、…自分が否認したり嫌悪したりするような宗教的な意見や行為に対して、他人の自由を我慢し許容することを指すのである。(164頁)
宗教的寛容の擁護者も無神論者は敵視する。(同)
ジョン・ロックの章にこのようなことが書いてありました。日本列島在住者のなかには苦手な人も多そうですね。宗教に限らず、こうした寛容さをもちあわせていないと、交渉というものが難しいだろうなと思います。
五味政信ほか編『心ときめくオキテ破りの日本語教授法』(くろしお出版)
- 作者: 五味政信,石黒圭
- 出版社/メーカー: くろしお出版
- 発売日: 2016/05/31
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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迫田久美子「第1章 日本語教師は接客業である:学習者を知り、理解することがすべての第一歩」はだめですね。教師に対して未知の言語で授業を体験させる、などはよい試みだと思いますが、最後の着地点が「トイレ掃除」で、どうしてこうなった……。
「第5章 笑う門には福来る:笑いは学習を促進する」を執筆した尾崎由美子氏は、最後の座談で、教科書と生教材とどちらが優れているかに関して、生教材のほうがフレッシュでおもしろいとしたうえで、「教室で使う分には、著作権をあまり気にしないで使えるので、いろいろと自由ですよね」(205頁)と語っています。著作権について誤解があるような……。
「第8章 演じないロールプレイ:もっと自由に楽しく活用してみよう」の渋谷美希氏と「終章 『楽しい日本語授業』の条件とは何か?」の五味政信氏はジェンダー、セクシュアリティやそれにまつわる偏見・差別・人権についてちょっと無頓着すぎやしませんかね。「恋愛について扱うことが難しい場合や、LGBT(性的少数者)への配慮が必要な場合もあるので、全く違った設定も考えたほうがいいでしょう」(158頁)だの「この学習者はどんな例に登場してもらっても大丈夫、どんな内容の話題を投げかけても大丈夫と教師の側が安心できる学習者がクラスには必ずいるものです」(189頁)などと留保をつければ問題ないのでしょうか。いわゆる「いじり」は受像器の中から広まった行為だと思われますが、教師が学習者に対して行うときの権力構造を意識しない日本語教師。
志村ゆかり「第3章 教師は仕掛け人である:工夫次第で学習者のモチベーションがぐんと上がる」や筒井千絵「第4章 制約のなかで戦え:与えられた条件で最大の効果を上げる教師のワザ」、石黒圭「第9章 教師は何もしなくていい:学習者が主体的に学べる環境作り」はたいへんありがたい論考でした。なるべく文脈を与えて練習させたいものです。そして、おおむね二十歳前後の、言ってみれば「いい年した」青年たちが相手なので子供じみた練習を避けたいし、「〇〇ちゃん、すごい、すごい」式の「ほめて伸ばす」もしたくないし。石黒の論考でウィリアム・ジェームズやミハイル・バフチンと出会えたこともうれしかったです。
望月紀子『ダーチャと日本の強制収容所』(未來社)
- 作者: 望月紀子
- 出版社/メーカー: 未来社
- 発売日: 2015/03/10
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曹乃謙『闇夜におまえを思ってもどうにもならない』(論創社)
闇夜におまえを思ってもどうにもならない―温家〓(ウェンジャーヤオ)村の風景
- 作者: 曹乃謙,杉本万里子
- 出版社/メーカー: 論創社
- 発売日: 2016/11
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www.toho-shoten.co.jp
日本ネパール協会『ネパールを知るための60章』(明石書店)
- 作者: 日本ネパール協会
- 出版社/メーカー: 明石書店
- 発売日: 2000/09/20
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1月に読んだ本
«日本語学»2016年11月特大号(明治書院)
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年末に読みました。特集は「手書きの字形を考える」でした。版元のウェッブ・ページによると、「世界言語の中の日本語、史的変遷、言語芸術における特徴など、多彩な視点から日本語研究の最先端を広く一般に紹介。国語教育現場へも実際的・具体的な情報を提供し、研究と教育の橋渡しをする。」*1とあります。特集の記事で、はじめの三つは字体の歴史や指針の紹介としてありがたかったです。残りは随筆ないし意見文とでも呼んだほうが適切のように思われました。投稿規定を読むと、「日本語学、日本語教育学、国語教育学に関する、投稿者独自の新しい知見を含む研究紹介論文」の「採否は、本誌編集委員の審査により決定」すると書いています。特集についてはすべて依頼論文なんでしょうか。参考文献のないものは通常「論文」とみなされないような気がしますが。
明朝体は活字のために生まれた書体です。もっと手書きの書体に近いものに、教科書体があります。日本語を学習する人のための教科書も、たとえば『みんなの日本語』(スリーエーネットワーク)などは教科書体で書かれています。ところが、日本語学校で配る仮名の宿題用紙がしばしば明朝体で書いてある。学習者の中には、どちらが正しいのかと悩む人がいます。二千十六年二月に文化審議会国語分科会が報告したし指針*2にしたがえば、こんなものはどちらでもいいわけです。
私に限らず、三人の読者の皆様におかれましても、初等教育中は漢字の「とめ・はね・はらい」等を厳しく指導された経験をお持ちではないかと思います。この指針によると、字体が同じであれば字形の差異にこだわらなくていいようです。この報告が発表された当初はちょっとした騒ぎになっていたように記憶しています。けれども、実はこの見解は戦後に「当用漢字字体表」が発表されたときから何も変わっていないとのことです。*3なぜか教育現場に周知されないまま現在に至っている、と。いまでも、従来の方針を踏襲し、「とめ・はね・はらい」を厳しく指導して「美しい」漢字の書き方を身につけさせるべく奮闘中の国語教員・日本語教師が大勢いそうです。浸透しなかった理由はなんとなく想像がつかないでもない。日本列島社会に土着の人たちは、行政に対して水戸黄門めいた役割を求めがちですから、当用漢字/常用漢字字体表に「正しい字形」を勝手に見出したとか、こんいちのように電網が普及するまえは、当の資料にこうしてたやすく接するのが難しかったのだろうとか。いずれにせよ、明朝体はもともと印刷のためにつくられた形なのに、それが楷書の正しい形として手書きの規範とさえされつつある、などというのは、「便法がなぜか至上命令と化していく」、と一般化してみると、他の分野でもよく見かける光景です。
これを書きながらふいに思い出しました。小学校中学年時の担任教員が、「『島』の字は正方形に近く書くときれいなんだよ」と。あれも明朝体が「正しい」と思っていたせいでしょうね。
田原洋樹『ベトナム語のしくみ』(白水社)
年末に旧版を読みました。
- 作者: 田原洋樹
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 2014/03/07
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エドゥアルド・デ・フィリッポ『デ・プレトーレ・ヴィンチェンツォ』(イタリア会館出版部)
エドゥアルド・デ・フィリッポ戯曲集 1 デ・プレトーレ・ヴィンチェンツォ
- 作者: エドゥアルド・デ・フィリッポ,ドリアーノ・スリス,大西佳弥
- 出版社/メーカー: イタリア会館出版部
- 発売日: 2012/06
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附属のDVDにはこちらのテレビ放送版が収録されています。日本語字幕がうれしいじゃねえか。特典映像では制作の舞台裏を垣間見ることができます。
トーマス・ペイン『コモン・センス』(岩波文庫)
- 作者: トーマスペイン,小松春雄
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2005/03/16
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社会と政府とを混同してしまって両者の間にほとんど、いな全く区別をつけようとしない著述家たちがいる。…社会はわれわれの必要から生じ、政府はわれわれの悪徳から生じた。(十七頁)
つまり徳行に頼っていては世の中を治めることができないので、政府という様式が必要になったのだ。したがって政府の意図や目的もまたここにあると言える。すなわちそれは自由および安全である。(二十一頁)
聖書のこの個所は簡潔明快だ。…ここで全能の神が王政に抗議したことは事実である。…なおカトリックの国で聖書を民衆に見せないようにしているのは、僧侶の策略と並んで国王の策略も加わっていると信じるに足る理由がある。(三十三頁)
アメリカはヨーロッパのどこかの国が構ってくれなくとも、従来と同じく、いな恐らくそれ以上に繫栄すると思われるからだ。(四十四頁)
イギリスが我々を守った動機が愛情ではなくて打算であることを考えもしないで、またイギリスはわれわれのためにわれわれの敵から守ってくれたのではなく、イギリスのためにイギリスの敵からわれわれを守ったことを考えもしないで、その保護を誇りにしてきた。(四十五頁)
ヨーロッパはわれわれの貿易市場なので、どの国とも偏った関係を結ぶべきではない。(四十九頁)
地球上でアメリカほど恵まれた状態にある国はない。(七十四頁)
今こそ人間の魂にとって試練の時である。夏場だけの兵士や日の当たる時だけの愛国者は、この危機に臨んで祖国への奉仕にしり込みするだろう。しかし今この時に踏みこたえる者は、男女を問わずすべての者から愛や感謝を受けるに値するのだ。暴政は地獄と同様に、容易に征服することはできない。しかしわれわれには戦いが苦しければ苦しいほど、勝利はますます輝かしいという慰めがある。(百十七頁)
以下は、ある人の思い出話である。中国が日本と戦っていた頃、上海の古本屋で『コモン・センス』を見かけたので、ページをめくってみた。そのときとくにアンダーラインを引いた箇所が目についたので、読んでみると、それは次の一節であった。「大陸が永久に島によって統治されるというのは、いささかばかげている。自然は決して、衛星を惑星よりも大きくつくらなかった。」(本書五五ページ)あの悲痛な時代に、恐らくペインは中国の知識人の心の支えになっていたことと思われる。(174・175頁)
吉行淳之介・編『奇妙な味の小説』
- 作者: 吉行淳之介
- 出版社/メーカー: 中央公論社
- 発売日: 1988/11
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国際交流基金『文字・語彙を教える』(国際交流基金日本語教授法シリーズ3,ひつじ書房)
- 作者: 国際交流基金
- 出版社/メーカー: ひつじ書房
- 発売日: 2011/03/31
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*2:「常用漢字表の字体・字形に関する指針(報告)」
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三省堂から書籍が刊行されています。
常用漢字表の字体・字形に関する指針: 文化審議会国語分科会報告(平成28年2月29日)
12月に読んだ本
必要に迫られて、精神分析批評をちょっと齧ることにしました。若いころにも、川本晧嗣ほか編『文学の方法』(東京大学出版会)で批評の実践例を読んだことがあります。「なにいってだこいつ」以外の感想が浮かびませんでした。このたびは大浦康介・編『文学をいかに語るか:方法論とトポス』(新曜社)と、丹治愛『批評理論』(講談社選書メチエ)を繙きました。この三作で精神批評理論を解説しているのは、いづれも山田広昭です。『文学を~』のほうはやはり何が何やらわかりませんでした。『批評理論』のほうは、谷崎潤一郎の『夢の浮橋』をめぐってスリリングな読解が展開されます。『夢の浮橋』を読みたくなりました。とはいえ、これは精神分析批評よりナラトロジーの読みとしておもしろかった。最後のとってつけたような精神分析的な読みは余計でしょう。
メモを取らなかったので、うろ覚えで書きますと、『文学の方法』では、「ムッシュー・テストと劇場で」で、劇場の柱がファロスの象徴としてだかなんだか、そんな分析だったように思います。
医学の分野で精神分析はほとんど顧みられないようです。文学研究でいまだにありがたがっている人も少ないのかもしれない。教科書風の本の解説者が同じ人なのもまたそうした事情ゆえでしょうか。イタロ・ズヴェーヴォの『ゼーノ氏の意識』みたく、作品自体が精神分析の影響下にあるなら、それなりに意義深いものになりそうです。
- 作者: 川本皓嗣,小林康夫
- 出版社/メーカー: 東京大学出版会
- 発売日: 2010/01
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- 作者: 大浦康介
- 出版社/メーカー: 新曜社
- 発売日: 1996/07
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- 作者: 丹治愛
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2003/10/10
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ダン・レメニイ『社会科学系大学院生のための研究の進め方:修士・博士論文を書くまえに』(同文館出版)
社会科学系大学院生のための研究の進め方―修士・博士論文を書くまえに
- 作者: ダンレメニイ,Dan Remenyi,小樽商科大学ビジネス創造センター
- 出版社/メーカー: 同文舘出版
- 発売日: 2002/09
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- 作者: 日暮聖
- 出版社/メーカー: 影書房
- 発売日: 2010/02
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近松の『心中宵庚申』は従来、作劇法に難があるとされてきました。ところが、貨幣経済社会が成立したことを背景にすえてみると、見事な筋運びの作品に変貌するんです。なんとアクロバティックな。著者は触れていませんけど、『心中天網島』にもこの視点を掛け合わせてみると、どうなるのでしょうね。
山内博之『OPIの考え方に基づいた日本語教授法』(ひつじ書房)
OPIの考え方に基づいた日本語教授法―話す能力を高めるために
- 作者: 山内博之
- 出版社/メーカー: ひつじ書房
- 発売日: 2005/07
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インフォメーション・ギャップをとりいれたり場面依存型のシラバスを導入したりすることに異存はないけれど、それをどうやって体系化するかが肝腎でしょうに、そこがするりと抜け落ちているのも、ね。その点は『まるごと 日本のことばと文化』が具現化していると言えなくないかもしれない。
廣末保『心中天の網島』(岩波書店)
- 作者: 廣末保
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1983/03
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- 作者: 広末保
- 出版社/メーカー: 影書房
- 発売日: 2000/08
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台本を1行1行丹念に読んでいく著者の力量に驚嘆しないわけにはまいりませんが、けっきょくこの戯曲が現代人たるわたくしには難解であることにはかわりませんでした。初演以来再演されなかったのを半世紀近くたって近松半二が改作、さらに歌舞伎になって命脈を保っているわけですから、当時の人にとっても理解がむずかしかったのかもわかりません。そうやすやすと心中させない門左衛門。貨幣経済社会の到来を横軸に解釈できないものかとも、持ち前の悪い頭で考えてみましたが、むりでした。
亀井秀雄「『坊っちやん』:『おれ』の位置・『おれ』への欲望」(『主体と文体の歴史』所収、ひつじ書房)
- 作者: 亀井秀雄
- 出版社/メーカー: ひつじ書房
- 発売日: 2013/06/10
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«悲劇喜劇»2017年1月号(早川書房)
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2016/12/07
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中村捷・編『人文科学ハンドブック:スキルと方法』(東北大学出版会)
- 作者: 中村捷
- 出版社/メーカー: 東北大学出版会
- 発売日: 2005/04
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野家啓一が、人文科学も役に立つとか、人文科学は心を鍛えるとか、書いていて、へえこんな凡庸なことをいう人だったのかと……。沼崎一郎は、とにもかくにも誰でもいいから大学の教員にどんどん会いに行け、と書いていて、これはいいですね。指導教員にすら会わずにドツボにはまっていく大学生がときおりいます。それが私だ。
国際交流基金『初級を教える』(国際交流基金日本語教授法シリーズ第9巻、ひつじ書房)
- 作者: 国際交流基金,阿部洋子,中村雅子
- 出版社/メーカー: ひつじ書房
- 発売日: 2007/03
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筒井清忠・編『新昭和史論:どうして戦争をしたのか』(ウェッジ)
- 作者: 筒井清忠
- 出版社/メーカー: ウェッジ
- 発売日: 2011/05
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昭和史講義: 最新研究で見る戦争への道 (ちくま新書 1136)
- 作者: 筒井清忠
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2015/07/06
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- 作者: 筒井清忠
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2016/07/05
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- 作者: 筒井清忠
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2010/04/09
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戦前の二大政党制はごく短期間に終わりました。両党とも慢性不況を克服できず、野党は与党のスキャンダルを攻撃するばかりで、政党政治に対する不信感が高まります。同時に、明治以来の国是であった親英米志向の外交方針が特権的な旧支配体制を維持するものとみなされ、攻撃される対象になります。そして、満州事変という事実上のクーデターが起こると、天皇・政党・軍部のバランスが崩れて、集権的な意思決定能力にひびが入りました。この状況で総理大臣に就任したのが重要な局面でことごとく悪手を打つ男・近衛文麿。外交安全保障を国内世論受けの印象論でしか理解していませんでした。また、当時の新聞は中間層と草の根階層が支持基盤でした。煽情主義とナショナリズムに影響されやすいこの階層に訴えるために、政府攻撃と愛国心を主題に据えて、対外強硬の姿勢をとります。
今世紀の世界でも見たことがあるような気のする光景ですね。
山崎正和の担当分「第5章 インテリと知識社会の変貌:アカデミズム・ジャーナリズム・ポピュリズム」は編者が大幅に改稿したものです。原テクストは「『インテリ』の盛衰:昭和の知的社会」だそうで、これ、たしか大学入試対策の現代文で問題を解いたはず。岩波文庫発刊の辞から亜インテリ(知的中間層)が学界に対抗心を燃やしていたことを明らかにするくだりはまだ覚えています。若いころの自分は現代文の評論問題や英語の長文問題に知的好奇心を刺激されていたものです。
勝海舟は大陸の大きさをきちんと認識した発言を『氷川清話』に残しています。どうもこのあたりを理解せずに、かつ事実と願望を区別できない人が昔も今もいますよね。
11月に読んだ本
町田和彦・編『華麗なるインド系文字』(白水社)
- 作者: 町田和彦
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 2001/01
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細川英雄『増補改訂 研究計画書デザイン』(東京書籍)
増補改訂 研究計画書デザイン 大学院入試から修士論文完成まで
- 作者: 細川英雄
- 出版社/メーカー: 東京図書
- 発売日: 2015/10/10
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*1:私自身は大学で学んだことが役に立っているとはいえ、研究というものに向いていないこともまた確かなのがつらい。
10月に読んだ本
フェデリコ・ガルシーア・ロルカ『血の婚礼』(未來社)
- 作者: F.ガルシア・ロルカ,山田肇,天野二郎
- 出版社/メーカー: 未来社
- 発売日: 1954/03
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文学はある時代の意識や規範の保存装置でもあるわけで、他国の人間が想像するスペイン人を絵に描いたような類型化がされている点ではおもしろかったと言えます。翻訳者が解説で嘆いているのは、日本国に「民衆のための劇」は数あれど「民衆の劇」が根づかないのはどうしてだろうねえ、ということです。そりゃ、「演劇」は西洋から輸入されたもんだからだろう、と言いたくなりますけれど、輸入されてのちに定着したものもたくさんありますね。当時の大学進学率を見れば、知識人と一般大衆の差は今よりずっと大きかったのは一目瞭然ですが、こうしてあらためて文章として読むと新鮮でした。
フェデリコ・ガルシーア・ロルカ『ベルナルダ・アルバの家』(未來社)
- 作者: F.ガルシア・ロルカ,山田肇
- 出版社/メーカー: 未来社
- 発売日: 1956/03
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オンラインで自宅学習
大学受験と言えば、二十世紀末は予備校が駅前のビルを一棟丸ごと使って、その大教室に浪人生がすし詰め、といった印象がありましたが、二十一世紀になりますと、学習塾が雑居ビルのひとつの階を借りたところで現役高校生が専業講師の映像授業を受講ないし大学生の時間給講師に個別指導*1を受ける、が主流になった感がありました。そして二千十年代には、各人が自宅に配信される映像授業を視聴する形式が、有料無料を問わず隆盛しているように思われます。
ところが、無料で配信していた団体が運営を終了することを告知していました。あんなに華々しく登場したのに。その理由について考察してらっしゃる方がいました。
genuinestudy.seesaa.net
genuinestudy.seesaa.net
真偽のほどは知りませんが、さもありなんとは思います。
それで、日本語教育の世界でも類似の団体がありますよね。理念も似ています。*2受験産業のほうでは、自宅でのオンライン学習をしかけている勢力が有料無料とも苦戦していると見えるだけに*3、日本語教育のほうで成功するのかどうか、気にならなくもないです。学校教育のほうじゃ、アクティブ・ラーニングが支配的ですけど、これとの関係もどうなんでしょうね。*4
自宅でオンライン学習は難しかろうと思います。根拠は自分の霊感にすぎませんが。何もオンラインでなくとも、昔から通信教育というものがあります。この手の学習は、私同様ぼうっとした人間にはとかく継続が難しいものです。私のささやかな楽しみは、東京外国語大学言語モジュールと大阪大学高度外国語高教育独習コンテンツで外国語を自習することです。けれども。これがなかなか。だらだら続けて三周した言語もあります。それでもやはり初級が完了した気にはなれません。学習塾と予備校のいいところとして、たとえ無理やりであっても規則的に授業を受けなければならない点が挙げられます。しかも確認テストのようなものをさせられて、習得度が測りやすい。
対面か映像越しかの違いはあれど、教室に通って学習する形態はこれからもまだ必要とされるはずです。
- 作者: 黒田龍之助
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
- 発売日: 2012/10/01
- メディア: Kindle版
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*1:と言いつつ実態は講師一に対し生徒二、もしくは一対三
*2:草創期に講師として出演されていた方が現在は大学を卒業しているらしき点も。関係ないですが、その方は大手広告代理店にお勤めである様子で、なんと申しますか、いかにも、な。
*3:上のウェッブログの方は講師の質が低いとの非難に抗議しておられますが、既存の大手予備校との質の差は否みがたいと思います。これは有料の側も同様で、いわゆる三大予備校のトップ講師が移籍していないことは象徴的に思えます。
*4:直接の関係はないものの、こんなニュースはありました。 スタディサプリ×埼玉県教委、教員向けアクティブラーニング教材開発 | ニュースまとめ「ニュービー」
外国人技能実習生を受け入れる企業の問題点
問題を起こす企業は、過疎地の零細企業である。法違反を摘発し勧告を求めれば企業はほとんどが倒産する。*1
倒産した事業主は新たな受け入れ先を探す必要があると、厚生労働省は明記しています。*2けれども、そう簡単に次の受け入れ先が見つかっていないらしきことは、上の報告書からうかがえます。
上のレポートも本書も旧制度下の話です。
「研修生」という名の奴隷労働―外国人労働者問題とこれからの日本
- 作者: 「外国人労働者問題とこれからの日本」編集委員会
- 出版社/メーカー: 花伝社
- 発売日: 2009/02
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