ポレンタ天国

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目上の人を「ご苦労様です」とねぎらうことは失礼じゃなかった

 ねぎらいという行為は、本来は自分と同等か目下の人物に対して行うものであり、目上の人物に対してねぎらうということはあまり考えられません。したがって、人によっては目上の人物に「お疲れ様(です)」を用いることに抵抗を感じたり、また目下の人物に「お疲れ様(です)」と言われることに不快感を示す場合もあると思われます。*1

 

とのことで、昨年、タモリ氏も「ヨルタモリ」とかいう番組で、子役から「お疲れ様です」とねぎらわれることに対して不快感を表明していらっしゃったように思います。

 

倉持益子「『御苦労』系労い言葉の変遷」(《明海日本語》第16号、2011年2月)*2によりますと、「御苦労」は、江戸時代後期には目上の人にも同等の人にも目下の人にも使用される言葉だったとあります。ただし、武士階級では、目上の人から目下に人に対して、「大儀」がつかわれました。明治時代以降、軍隊内で「大儀」にかわって「御苦労」が採用され、それが時代小説で多用されます。その結果、「御苦労」は主君が配下の者をねぎらう言葉、という誤解が生じたのではないかと推測してありました。そして、「お疲れ」系のねぎらい言葉の勢力が拡大して現在にいたります。

 

この論文にしたがえば、ねぎらいという行為は、「本来は」目上の人物に対して行っても問題なさそうです。

 

はじめに引用したウェッブ・サイトは、外国語としての日本語や第二言語としての日本語を教える人のためのものです。わたくしの接した日本語学習者のなかには、「お疲れさまです」は目上の人に、「ご苦労さまです」は目下の人につかいましょう、と教わった人もいます。昨年、大阪で投票者が「ご苦労さんです」と投票管理者に言われて激高し、公職選挙法違反(投票管理者への暴行等)容疑で逮捕されました。そういえば老父もかつて、「ご苦労さまです」と駅員から声をかけられて、失礼だと怒っていたものです。

 

 

お言葉 ビアジョッキ 「お父さん いつもお仕事ごくろうさま。」 SAN1579

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