ポレンタ天国

たぶん読んだ本・見た映画の記録が中心になります

『現代議会主義の精神史的状況 他一篇』と比較級

 カール・シュミットの『現代議会主義の精神史的状況 他一篇』(岩波文庫)を読みました。

 両篇によれば、議会主義の精神的基礎は「討論」と「公開性」にあります。ところが、重要な決定は密室でくだされるようになりました。そして、相手に正しさと真理を説得するのでなく、手近な利害と激情へ呼びかけて多数派を占めることが問題になってきます。

新聞論説や集会の演説や議会の討議から真の正しい立法と政治が生まれてくるという信念は、いまや微々たるものにすぎない。(61頁)

 だから独裁しかないのだあっ、とは思わないものの、はて、どうしたもんですかねえ。まあ、私のつまらぬ感想を読むより、こちらのかたの文章を読んだほうがよっぽどためになることと思います。

ameblo.jp


 日本語の格助詞「より」は比較の基準を表します。「東京は大阪より人が多い」。印欧諸語は往々にして、言わずもがなの比較対象を省略します。これを日本語でどうするか、ということで「より」を副詞にして単独で用います。「彼は(他の人)より英語がうまい」、「(今まで)よりよい暮らし」。どうもこの副助詞「より」の持つ翻訳臭が好きになれないので、自分が訳すときは、「もっとよい暮らし」や「さらによい暮らし」、「いっそうよい暮らし」などにします。もちろん、他の人が副詞「より」を使うのをやめろとまでは思いません。が、

それは、ブルジョワについて社会主義が描いた像よりもより大きな印象を与え(105頁)

という表現を見ると、赤い顔して赤面し。