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ポレンタ天国

ちょいデブおやじのダイエット奮闘記です(笑)

「2年間の日本語教育で非漢字圏学習者をN2に合格させるのは無理」

などと、日本語教育の世界では言われているそうです。非漢字圏学習者とは、ここでは、ネパールやベトナムから日本国内の日本語学校に留学した人たちのことです。日本語教師SNSでこうした学生のやる気のなさや成績の悪さを責めたり嘆いたりしているのをよく見かけます。


 ものすごく大ザッパに言うと、日本国内の日本語学校は、高等教育機関(大学院や大学、短大、専門学校等)に進学するための予備校に近い存在です。学生は最大2年間通います。N2とは、日本語能力試験で上からふたつめのレベルを指します。認定の目安は、

日常的な場面で使つかわれる日本語の理解に加え、より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解することができる

読む ・幅広い話題について書かれた新聞や雑誌の記事・解説、平易な評論など、論旨
    が明快な文章を読んで文章の内容を理解することができる。
   ・一般的な話題に関する読み物を読んで、話の流れや表現意図を理解することが
    できる。
聞く ・日常的な場面に加えて幅広い場面で、自然に近いスピードの、まとまりのある
    会話やニュースを聞いて、話の流れや内容、登場人物の関係を理解したり、要
    旨を把握したりすることができる。*1


 こちらのウェッブログをご高覧いただきたい。
d.hatena.ne.jp

そして、以下の点に、ご注目ください。
・英語話者にとって極めて困難な言語は、アラビア語、中国語(広東語、北京語)、韓国語、そして日本語である。
・これらの言語を習得するためには、真剣に八十八週、二千時間の授業を受け、一日三、四時間の自習を要する。
・英語話者にとって、ベトナム語ネパール語は「英語と大きな言語的ないし文化的違いを有する言語」で、習得に四十四週、千時間の授業を必要とする。
・日本語話者にとって習得がやさしいのは、インドネシア語やマレー語、朝鮮など。
・少し難しいのはスペイン語ベトナム語、中国語など。
・難しいのはフランス語やドイツ語など。
・かなり難しいのはヒンディー語アラビア語、ロシア語など。たぶん英語も。

英語話者や日本語話者は、平日に一日五時間、八か月授業を受けつづけたらベトナム語を習得できる計算になります。逆もまたしかり、と断言できる性質のものではありませんが、ベトナム語話者が日本語を習得することもまた、アラビア語の習得に比べたら楽である蓋然性は高いかもしれません。


 日本語教育機関に在籍する学生の出身国・地域は、二千十年度まで中国、韓国、台湾の順に多かったのが、二千十四年度から中国、ベトナム、ネパールになっています。*2急激な変化と言ってよいでしょう。で、それに対応する教え方の研究が進んでいないんじゃないですかね。ことベトナムにかぎって言うと、漢字文化圏ですから、漢字で書けば共通する語はたくさんあります。その点で朝鮮語と同じです。


 当然ながら人類の大半は漢字を理解しません。じゃ、東アジア以外で日本語教育は失敗しているのかというと、どうもそういうわけではなさそうです。白井恭弘氏によると、カーネギーメロン大学の学生は、週四時間で三か月ちょっと勉強すれば、会話が十五分間でき、漢字仮名まじりの手紙を二、三頁書けるようになるそうです。*3そんな優秀な大学を引き合いに出されても、とお思いになるのももっともですが、英語話者にとって習得がかなり難しい言語であるにもかかわらず、です。


 いえ、まあ、わかるんですけどね。私は古典ギリシャ語や聖書ヘブライ語を一年間勉強してもまったくものになりませんでした。ラテン文字を使用しない言語はそれだけで、むずかしく感じがちです。ただ、自分が真剣に、かつじゅうぶんな学習時間を割いて努力したかと問われたら、面目ないと答えるしかありません。机を並べた人たちには、きちんと文献を読めるようになった人もいましたよ。


 余談ですが、外国語をまともに勉強したことのなさそうな日本語話者はよく、「日本語は世界でいちばん難しい」と思いこんでいます。じつは中国語話者も、「中国語は世界でいちばん難しい」と信じています。中国語学習者数はすでに一億人を超えているとの話ですが(日本語は四百万人)、じゃ、その一億人は万年初心者ばかりかいうとそうでもないでしょう。


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*1:www.jlpt.jp

*2:日本語教育機関の調査・統計データ | 日本語教育振興協会

*3:パッツィ・M・ライトバウンほか『言語はどのように学ばれるか』(岩波書店)の解説より