ポレンタ天国

ちょいデブおやじのダイエット奮闘記です(笑)

5月に読んだ本

細川英雄ほか編『複言語・複文化主義とは何か:ヨーロッパの理念・状況から日本における受容・文脈化へ』(くろしお出版)
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 日本の外国語教育でよく見る主張に対する違和感の正体はこれでした。
Can-DoっていうときCEFRっていうのやめたらみんな幸せにならないかなtam07pb915.wordpress.com
ヨーロッパ言語共通参照枠に触れなきゃいいのに、can-doリストやタスク先行シラバスを持ち出すときに決まっていっしょにするものだから、理念無視かよ、と思って苛苛が募っていました。第6章で細川が問題提起していますが、私も同意します。
 コミュニカティブ・アプローチが導入された際に、そもそもコミュニケーションとは何かについて議論されないまま、具体的な方法ばかり取りざたされ、文型練習からロールプレイによる定着へと進んだと、細川は指摘します。CEFRの根本理念は四つあります。

ヨーロッパにおける個人一人ひとりのなかにある複言語・複文化性を認めること、そのことを基本にした個人間の相互理解が重要であること、そのための市民性の確立が必要であること、そして、そうした市民によるヨーロッパ社会形成をめざす(154・155頁)

ことです。その先には戦争のない平和な社会の実現があると言っては穿ちすぎでしょうか。とまれ、日本社会では、何のための言語教育かが含意されずに、日々、方法の模索ばかりが行われています。


ハワード・W・フレンチ『中国第二の大陸アフリカ:一〇〇万の移民が築く新たな帝国』(白水社)
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 著者は最後まで慎重な姿勢を崩しません。それでも超絶おもしろい。文化大革命時に青春時代を過ごした「失われた世代」が人生の再起をかけて移住し、近ごろの若いもんは根性がないなんて言っているけど、当の若者たちも本国の苛烈な競争社会に耐えかねて移住し、一旗揚げようと目論んでいる。アフリカ人が成功するための第一歩は路上の小商いだけど、この分野にまで中国人が進出しているものだから、わずかにあった地場産業がどうなっているかは言うまでもありません。
 著者も指摘する通り、余剰人口を外へ吐き出してその地で食糧増産を図る手法は、かつての満洲国を髣髴とさせます。そして中国ばかりでなくインドも乗りだしているらしきことが本書でチラと触れられています。
 かつてはレバノン人やフランスの草刈り場だったところへこうやって新興国がやってきた。どんな事業でもすべて自分たちが仕切って現地人には最底辺の仕事しか回さないと言って、不満がたまっているようです。中国人の言い分としては、現地人はマネジメントができないから、です。教育の問題は深刻ですね。現地の政府首脳部が私益しか考えていないことも大きな要因です。天然資源を外国に売り飛ばした結果として立派な大統領宮殿ができるばかりで、売却益を人材育成に回しません。
 アフリカの夢ももはやかなり小さくなって、後発組は露天商で終わってしまうようですが、さてどうなることやら。  


池田秀三『自然宗教の力:儒教を中心に』(叢書現代の宗教16、岩波書店)
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 専門家の発言だからといって鵜呑みにしてはいけないことぐらいもちろんわかっているのですが、それでもなかなかどうして、判断を誤ることが多々あります。KJ御大の『儒教とは何か』にひどく感銘を受けた過去の自分をぶん殴ってやりたい。
 著者は宗教の要件を(1)超越的存在者に対する信仰、(2)教団組織の存在すること、の二点とし、「儒学を宗教とは認定しないけれども、儒教に宗教性はある」(179頁)との立場をとります。宗教とまでは言えない、というわけです。
 儒教宗教説、非宗教説のそれぞれを検討したうえでの結論です。「いかなるわけか加地氏は先行業績として山下(引用者註:龍二)氏の名を挙げていない」(100頁)時点でいろいろと察してしまいます。

私はなお定説に与したく思う。その理由は、定説の読み方のほうが素直、換言すれば、山下氏の読みは不自然な感じがどうしてもするからである。それはまったく感覚的なものでしかないが、私は古典の読みにおいては感覚は極めて重要だと考える(文法的には成り立ち得ても、あるいは理屈はいちおうと通ったとしても、不自然だと感じさせられる読みはまず正しくはない、というのが私の基本的立場である)。(112頁)

という件りを読んで、親方の口癖、「真実はいつも単純で、素直で、強い」を思い出しました。


靜哲人『英語授業の大技・小技』(研究社)
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 ここまで手の内をさらしてくれるのか、と驚きました。著者が英語教師として実践したテクニック(今風に言えばTIPS)の数々が紹介されます。
 1.遅刻させないためには 2.分かりませんと言われたら 3.居眠り禁止の3段階方式 47.さくさくやるぞ小テスト 52.これがベストだテスト返却 53.再試あの手この手 などは言われてみればそうだよね、ですぐ使いたくなります。
 それと、発音の重要性に気づかせてもらいました。これまたよく言われることではありますが、発音できない音は聞き取れないわけでして、シャドーイング大事。最近はやりの協働学習ないしピア・ラーニングも、靜先生は二十世紀末から実践してらしたんですよ。