ポレンタ天国

ちょいデブおやじのダイエット奮闘記です(笑)

8月に読んだ本

張兵『訪日中国人から見た中国と日本:インバウンドのあり方』(日本僑報社)
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もう少し突っ込んだ分析が読みたかったんですが、そもそもこの分野に学術的な分析がろくすっぽなかったことを思えば干天に慈雨の感あり、よしとします。ビザ緩和が最大の要因ということですかね。日本政府ももちろん観光の振興を進めていて、ドイツのロマンチック街道でしたっけ? あれのような
ルート開発の話は、先月読んだ『観光学』にもありました。


林望『増補 書藪巡歴』(筑摩書房ちくま文庫)
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あまり例を見ない書誌学の随筆です。ときおり、フリーランスになってから、しだいに偏屈になっていく書き手がいます。やはり独立自営でやっていくのはたいへんだねえ、と他人事のように思っています。リンボウ先生はこの増補版でむしろおだやかになっておられて、なんだかほっとしました。本書は書物のことだけでなくリンボウ先生の指導者についての回想も多いのですが、どちらの話題であっても、私同様に書誌学がいったい何なのかよくわかっていない人にとっては学問の案内になっていてありがたいです。そういえばフランス文学には、「生成研究」という分野がありますよね。ああいう草稿研究は日本文学でもなされているんでしょうか。


清水亮『教養としてのプログラミング講座』(中央公論新社中公新書ラクレ])
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プログラミングとはどんなもので、また人間の生活といかにかかわっているかについて解説した本です。教養として勉強してもいいけど、考え方にプログラミングの手法を取り入れたいだけなら、プログラミングじゃなくて論理学や法学でもいいし、大学でなにかしらまじめに受講していればそれでじゅうぶんな気もします。プログラミングのとっかかりになりました。


岡田睦『明日なき身』(講談社文芸文庫)
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この著者の存在を知ったのは≪新潮≫でです。生田耕作の没後十年でお弟子さんが寄稿しておられたので、それ目当てで買ったら、下流老人の日常をつづった貧乏くさい話も載っていたのです。三度目の妻に捨てられてからというもの修理もままならないあばら家に暮らし、スーパーで買った安い太巻きを袋詰めするカウンターでほおばって店員に注意される、みたいな挿話ばかりでつよく印象に残っていました。二千十年年以降消息不明、ということは担当編集者も所在がわからなくなったのでしょう。それもそのはず、などと言っては変ですが、収録された諸作品を読む限り、生活保護をもらいながら、いわゆる「貧困ビジネス」にからめとられて居所を転々をしていたようです。これじゃ離婚されてもしょうがないよねえと思わざるを得ない性格・言動が作品にところどころ出て来ます。ですが、著者はそんなことをつゆほども自覚していないのかわきまえていての矜持なのか、なんともとぼけた味わいでそこにひきこまれました。私小説もまた虚実は皮膜の間にありますから、いちいち重ね合わせたり、真に受けたりする必要もありませんけどね。自分が貧困小説を好きなことを再確認しました。


アンガス・ディートン『大脱出:健康、お金、格差の起原』(みすず書房)
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著者の一家がまさに「大脱出」を成し遂げた人なんだそうです。祖父は農業をあきらめて炭鉱夫になり、父は夜間学校に通って土木技師になります。そして著者は名門パブリックスールの特待生になることができ、ケンブリッジ大学に進学します。著者の子供たちはプリンストン大学を卒業後に金融関係の仕事をしているそうです。
 本書は人類がいかにましな暮らしをするようになったかを有史以前からたどります。後半だんだんとつらくなります。米国は千九百七十年代から成長が鈍化しますが、それでも成長は続けているとはいえ、実際にその恩恵にあずかっているのは一握りの富裕層だけで、貧困層は取り残されています。このあたりは金成隆一『ルポ トランプ王国』(岩波新書)と重なります。また、アフリカ諸国にとっては援助がかえって「大脱出」を阻害している、と。支援金は直接国民に渡されるのではなくて政府機関を通すために、大統領宮殿が豪華になっていく。困ったことに、援助の減少と一人当たりGDPの成長の時期が一致しているのだとか。そういう時期から中国による援助が増えていることはハワード・W・フレンチ『中国第二の大陸アフリカ』(白水社)に書いてありました。
 経済成長と命を救うこととに因果関係がないのにびっくりしました。ハイチのように経済が破綻した国でも幼児死亡率は減少しているようです。近年の仮想空間では「経済政策が第一」みたいな風潮が幅を利かせているような印象がありましたが、そして確かに経済成長は重要ではあるけれども、やっぱり死亡率には医療政策が第一という当たり前新書です。
 ネパールはアジアでも最貧国なんですね。これ*1を見るとベトナムやらミャンマーやら日本への留学生が多い国、日本語学校の設立が急増した国が軒並み入っていて、なるほどそういうことかと合点がいきました。


マリオ・ヂ・アンドラーヂ『マクナイーマ:つかみどころのない英雄』(松籟社)
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しっちゃかめっちゃかな話というとブレーズ・サンドラールの『モラヴァジーヌの冒険』(河出書房新社)を思い出しますが、それのさらに上を行くはちゃめちゃぶりでした。ほんとうにつかみどころがない。口癖は「あぁ!めんどくさ!……」で、これは原文では何なんでしょう。
こういうのも出ているけれど、訳者がねえ。
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エドゥアルド・メンドサ『グルブ消息不明』(東宣出版)
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これまたとにかく楽しい本。なんでも作者がはじめてパソコンで執筆した小説なんだそうで、複製と貼付の効果がこれでもかと炸裂していました。ガウディと「コビーの冒険」しか印象にない街だったんですが、どちらも出てこなくて。