ポレンタ天国

たぶん読んだ本・見た映画の記録が中心になります

1月に読んだ本

大瀧雅之『基礎からまなぶ経済学・入門』(有斐閣)
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 著者の誠実さが伝わる本でした。「どちらが大切か?」と迫る二分法に騙されちゃいけないんですよね。たいていの場合、「どちらも大切に決まってるだろ!」で済む話なので。
 また、企業家と労働者の間に信頼がない社会では(低賃金, 手抜きをする)でナッシュ均衡が起こるって、そりゃそうですよね……。



水野一晴『世界がわかる地理学入門:気候・地形・動植物と人間生活』(筑摩書房[ちくま新書])
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 自然地理と人文地理両方のさわりがわかってお得な本です。地理学の研究方法について紹介することは主目的でないので、それについては別の本を読む必要があります。
 「ちなみに、バカ・ピグミーは、近隣農耕民をゴリラの化身とみなしているという(大石2016)。人間としての農耕民は仮のもので、死ぬと本来のゴリラの姿に戻ると考えているのだ。バカ・ピグミーは、身振りや振る舞い、興奮したときのうるささ、危険性から農耕民とゴリラの類似性を指摘する」



鈴木智彦『ヤクザと原発:福島第一潜入記』(文藝春秋[文春文庫])
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 当時の雰囲気を思い出して、なつかしくなりました。こういう本を読んでいると、あれもこれも勝手に「シノギの匂い」を嗅いでしまうようになりますね。



筒井淳也・前田泰樹『社会学入門:社会とのかかわり方』(有斐閣)
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 生老病死といったトピックに対して、量的調査と質的調査はそれぞれどんなテーマを立ててどのようにアプローチするかを解説した本です。研究テーマが決まらない学生にとってはかなり助かるのではないでしょうか。理論社会学についてはまた別の本で。



新保敦子・阿古智子『勃興する「民」』(超大国・中国のゆくえ5、東京大学出版会)
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 博士号持ちの大学教員が書いたものなのに、事実と意見の区別が曖昧です( -᷅_-᷄ )
 大陸と半島は蜜月関係だと書いてありますが、この翌年にミサイル配備決定がありました。
 遊牧民の生活は都市化していると書いた次のページで「遊牧民として自然に依拠する生活をしてきた文化的背景があるためか、」遊牧民の学童は「鷹揚で競争心がなく、試験のために全力を尽くす原動力が不足しているように思われる」などと……。
 引用元がイザ!とレコチャイで、前者は定量データに基づかず数人のインタビューをまとめたもの、後者は大陸メディアからの翻案(つまり孫引き)なんですが、研究書として没問題なんでしょうか?
 留守児童は親子間の愛着が形成されないから人間関係の問題を起こしやすいなどとも書いてあります。ベビーシッターとか全寮制の学校とかはいろいろな国にありますが、大問題を引き起こしているかどうかは寡聞にして知りません。
 新保氏部分の最後は「…と感じるのは、筆者だけであろうか。」ときたもんだ。
 阿古氏部分も陰謀論者の記事を主張の根拠にしています。
 公共圏が形成されない、インターネット空間内の政治的言論がともすれば過激になる、市民の分断、組織的なインターネット情宣などは島国にも見られるし、さほど特殊なことではないと思います。
 「事実は価値判断から中立ではありえない」ことに無自覚な人たちが書いた本という印象でした。たしかに某は通常「普遍的価値」とされるものだけど、そこからどれだけ足りないかを断罪するのはちょっと違うのではないか。そして研究者が無邪気にその価値判断を物差しにしていいでしょうか。