ポレンタ天国

たぶん読んだ本・見た映画の記録が中心になります

sigaro toscanoについて

ジュゼッペ・トマージ=ディ=ランペドゥーサ*1の短篇小説「セイレーン」(リゲーア)*2で、ロザリオ・ラ=チューラ上院議員は、❝fumava sigari toscani❞ toscani sigariを吸っています。このsigari toscaniの単数形sigaro toscanoとは何なのか、『伊和中辞典〈第2版〉』(池田廉ほか編、小学館)を引いてみます。

 

【sigaro】の項には、

un ~(引用者註:sigaroのこと) toscano  紡錘形の葉巻き

とあります。

【toscano】の項には

(イタリアの葉巻きの一種 )トスカーノ

とありました。

sigaroは「葉巻」、toscanoは「トスカーナの/トスカーナ人」といった意味です。

イタリア語版WikipediaにはSigaro toscanoの項目があったので読んでみると、「sigaro toscanoとは、マニファットーレ・シガロ・トスカーノ社がイタリアで製造する独特の葉巻」*3でした。

 

さて、「セイレーン」の翻訳は、私が確認できただけで5つあります。

 秋本典子・訳「リゲーア」『Spazio』巻号不明(日本オリベッティ社)

 竹山博英・訳「リゲーア」(『現代イタリア幻想短編集』、国書刊行会)

 小林惺・訳「リゲーア」(『池澤夏樹=個人編集 世界文学全集Ⅲー06 短篇コレクションⅡ』、河出書房新社)

 西本晃二・訳「鮫女(セイレン)」(『転換期を読む14 南欧怪談三題』、未来社)

 武谷なおみ・訳「セイレーン」(『ランペドゥーザ全小説:附・スタンダール論』、作品社)

このうち、秋本以外は手元にありますので、件の箇所がどう訳されているか並べてみました。

 竹山「トスカーナ葉巻をふかし」(p272)

 小林「トスカーナ産の葉巻をくゆらし」(p19)

 西本「トスカーナ産の葉巻を喫い」(p10)

 武谷「トスカーナ産の葉巻を吸って」(p396)

 

インターネットでの検索結果をざっと眺めた限りでは、葉巻を愛好する日本語話者はsigaro toscanoを「トスカーノ」と表記する例が多いようです。葉巻に疎い読者は、小林・西本・武谷の各翻訳ではブランド名だと気づかないかもしれません。かといって、「トスカーノ」と書かれても何のことやら分からないでしょうし、「葉巻のトスカーノ」あたりが妥当な訳ではないかしらと思いました。

 

 

現代イタリア幻想短篇集

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短篇コレクション ? (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 第3集)

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南欧怪談三題 (転換期を読む)

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ランペドゥーザ全小説――附・スタンダール論

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*1:ジュゼッペ・トマージ・ディ・ランペドゥーサ - Wikipedia

*2:作者の死後、「リゲーア」Ligheaの題で発表されましたが、本人は「セイレーン」La sirenaと呼んでいました。

*3:Sigaro toscano - Wikipedia