ポレンタ天国

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11月に見た映画・読んだ本

白雪・監督(2018)『THE CROSSING 香港と大陸をまたぐ少女』

映画『THE CROSSING ~香港と大陸をまたぐ少女~』予告編

羅湖通過経験者にうってつけの映画。青春映画は苦手なんですが、これはよかったです。原題の『過春天』どおりに、春が過ぎて夏が来るお話。春の高揚感に一歩引いてしまう人だっていて、でも季節はおのずと夏になる。広東語と普通話が両方出てくる点もよいです。



實清隆(2006)『人文地理学』古今書院
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「18世紀には後者の流れを汲むドイツ観念論が展開されるが、その中で地理学に大きな影響を与えたのは、カント(1724-1804)とヘルダー(1744-1803)である。/カントは自然地理学の講義のなかで、次のように地理学の位置づけを行っている」(4頁)。
「日本の長時間・低賃金労働を背景に、繊維を軸とした軽工業製品を輸出する一方」(30頁)😢
「全事業所のうち97.9%が99人以下の中小企業である。…1000人以上の企業の一人あたり出荷額を100とすると、…中小企業では29となる。…500人以上の企業の平均賃金を100とすると、…5~29人の企業では56にすぎない。…1000人以上の企業では30人以下の企業より、平均休日日数が年間26日も多い」(32頁)
「このように日本の高度成長は、ひと握りの大企業と、不況時には加工賃の切り下げにも堪え忍んでくれる『忠実』な中小企業が安全弁として支えてきたともいえる」(33頁)

「環境地理学」の章はちょっと……。環境ホルモンダイオキシンは時代の制約とも言えますが、微生物を使ってどうこうは……教科書の参考文献にあの版元の本を挙げるのは厳しい……。とはいえ、とっかかりとしては悪くない本だと思いました。この分量からすると、教室で使用するときはたぶん講師が仔細を語るのを前提にしているのでしょう。


松原彰子『自然地理学:地球環境の過去・現在・未来』慶應義塾大学出版会
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2020年に第6版が出ています。私は初版を読みました。
「暖流系の魚が獲れるなどの恵みがもたらされた。その時期がクリスマス前後であることから、この恵みに対してスペイン語で『神の子 イエス・キリスト』を意味するエルニーニョという言葉が当てられた」(初版65頁)
「地理学的なものの見方や考え方の特徴は、空間的な把握はもちろんのこと、時間的な解析も行って、それぞれに“ズーム機能”を持たせて考察する点にあると考えています。…学生の皆さんには、ここで得た知識や、ものの見方・考え方を今後のそれぞれの専門的な勉強に生かしていただきたいと思います」(初版はじめに)


礪波護・岸本美緒・杉山正明編(2006)『中国歴史研究入門』名古屋大学出版会
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宋代のところだけ。「宋代以降の中国社会では、地方州県で実際に政務を担当する胥吏の存在が重要な意味を持った…官吏も彼らを無視しては実務の執行が容易でない状況が生まれた…官吏心得とでもいうべき官箴書なる書物が多く編纂されるようになった」(132頁)