ポレンタ天国

たぶん読んだ本・見た映画の記録が中心になります

『神曲』と『いいなづけ』を学ぶ人のために

 ダンテ・アリギエーリの『神曲』とアレッサンドロ・マンゾーニの『いいなづけ』(『婚約者』の邦題もあり)は、いうまでもなくイタリアの二大古典であり、日本文学ならさしずめ紫式部の『源氏物語』と夏目漱石の『こゝろ』といったところでしょうか。ではありますが、日本語に翻訳されたものを読んでいると、ともすればうわつらを見るだけに終わってしまって、《『神曲』の天国篇は ❝言葉にできない❞ ばかりだったなあ》とか《『いいなづけ』は白麺麭がおいしそうだったなあ》とか、読んでも読まなくてもいいような、取るに足らぬ感想しかもたない小人物は私です。

 さいわい、日本には卓越したダンティスタdantistaと新進気鋭のマンゾニアーノmanzonianoがいらっしゃいます。藤谷道夫氏と霜田洋祐氏です。おふたりの論文を読めば、『神曲』と『マンゾーニ』がいかに精緻なたくらみに満ちた装置であるかがわかって、瞠目することうけあいです。天国にいるかもしれないダンテとマンゾーニにしてみたら、《余の意図を正確に見抜いてくれてうれしいぞよ》ってなもんでしょう。お二方が発見・紹介された仕掛けの数々をぜひとも副読本にしましょう。

藤谷先生が《イタリア学会誌》に発表した論文はこちらで読めます。
CiNii Articles 著者 -  藤谷 道夫

帝京大学の紀要に掲載された分はこちら。
http://opac.main.teikyo-u.ac.jp/t-repo/ctlsrh.do

未見ですが、書籍も刊行されています。(その後、読みました。かなりわかりやすいです。オカルトとか神秘思想とかがお好きな方もどうぞ)

ついでに。村松真理子先生の神曲本を読むと、プリモ・レーヴィの『アウシュビッツは終わらない』(朝日選書)が読みたくなります。

原初のことば (シリーズ物語り論)

原初のことば (シリーズ物語り論)


霜田先生の《イタリア学会誌》投稿論文はこちら。
CiNii Articles 著者 -  霜田 洋祐

京都産業大学の紀要はこちら。
https://ksurep.kyoto-su.ac.jp/dspace/handle/10965/3/browse?type=author&order=ASC&rpp=20&value=SHIMODA%2C+Yosuke

(2018年に博士論文が本になりました。快哉)
www.e-hon.ne.jp


神曲』は講談社学術文庫(原基晶・訳)、集英社文庫(寿岳文章・訳)、河出文庫(平川祐弘・訳)、角川ソフィア文庫(三浦逸雄・訳)などで入手できます。
河出文庫の『いいなづけ』(平川祐弘・訳)、岩波文庫の『婚約者』(フェデリコ・バルバロ訳)は2016年4月時点でいづれも版元品切・重版未定です。図書館か古書店でお求めください。

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